早川町

早川町の女性猟師に聞く!畑の獣害対策として始めた狩猟の世界

今回インタビューさせていただいたのは、早川町の大木彩さん

東京都の生まれ育ちで、早川町に移住してからは、NPO早川エコファームで遊休農地の整備や作物の生産、加工、販売などをして地域おこし協力隊として3年間活動した後、現在は伝統野菜の栽培方法を動画で記録作成したり、朝市で地元の野菜を直売したりなど集落支援員として活動をされています。

大木さんは実は、狩猟免許をお持ちで町の中では少数派の女性猟師でもあります。今回は、大木さんに狩猟について伺いました。

狩猟をはじめたきっかけ

狩猟を免許を手に持つ大木彩さん

狩猟はどのくらいされているんですか?

大木さん
まだはじめたばかりですが、ワナの免許をとったのは2021年2月で、鉄砲の免許をとったのが2021年11月の猟期が始まる頃でした。

狩猟にはどうして興味を持ったのでしょう?

大木さん
狩猟をするようになった入り口は、畑をやるのに困るなっていうところからでした。

この世界は人だけで完結するものではもちろんなくて、多様な生き物がいる中で私たちは生きているので、敵対する生き物なんていないというのが理想なんですけど...。

でもこのまま何もしないでいたら、畑は獣に荒らされてしまうし、獣にやられるからと畑を諦める人が増えれば、遊休農地も増えるばかりだしという問題があって。

きれいごとではない自然との付き合い方も勉強だなと思って、畑の獣害対策として狩猟を始めました。

狩猟はなんとなく大変そうなイメージがありますが、すんなりと始めることができたのでしょうか?

大木さん
そうですね、幸い、狩猟されている先輩方のお話を聞く中で、「自分でも狩猟、やってみようかな」って言ったら「おう良いんじゃない」ってエールをくれる人たちがいたので、その道に入りやすかったというのがあります。

仕留めた鹿の搬出など、狩猟のプロセスでは一人じゃ難しいことも多くあるんですが、そんなハードルを越えられるよう一緒に考えてくれて、口も手も出してくれる先輩方がいる環境だったからこそ、始められたことだなぁと思っています。

猟はどのようにおこなっているのですか? 

大木さん
私はワナを仕掛けたり、猟期中は町にある「かのし会」という猟師グループに参加させてもらっています。

グループ猟では、複数人が鉄砲を持って集まって、点々に待機します。その後猟犬が鹿を追い、出てくるところを待ち構えて撃つというやり方で猟をしています。

町には、鹿やサルなどの害獣を捕獲すると報酬をいただける「指定管理鳥獣捕獲」という制度があるので、猟期以外も狩猟が行われています。

誰かが鹿などを捕まえたらその都度、他の人に呼びかけて、タイミングの合う人に手伝ってもらって解体するということもしていますね。

実際に踏み入れた狩猟の世界はいかに

狩猟の世界に足を踏み入れてみて実際にどうでしたか?

大木さん
先輩方は命をいただくからにはできるだけ捨てずにおいしくいただく、ということ大事にされているんですよね。

仕留めて害獣駆除の報酬をもらったら捨てちゃうのではなくて、最後までおいしく食べる方法もいろいろ試していて。「ここの内臓は煮込むとうまいんだ」っていう話を聞いたりもします。

また、山に入る際には山の神様にお供え物をして挨拶する方がいたりとか、無事に獲物が捕まったらお神酒をささげて感謝を伝えたりとか、自然に対しての姿勢が一つ一つていねいなところも猟師さんのかっこいいところだなって思います。

野蛮に捉えられがちですけど、狩猟は自然と向き合い続ける山の暮らしの一部としてあるなと感じます。

生き物の命や自然に対して畏敬の念を持って、食べることで命のつながりを体現されている方がいるというのは、本当に貴重なことだなと思いました。

狩猟するとなって怖いって言う気持ちはありませんでしたか?

大木さん
それはありますよ!かなり抵抗ありましたね。ただ、最初はどちらかというと捕獲するのに必死でした。

初めの頃、地元の方に教えてもらいながらワナを仕掛ける練習からしていたんですけど、勉強することがたくさんあったんですよね。

例えば、かかりやすさや搬出のしやすさなどの観点から場所をどう選ぶのかや、うまくワナを踏み抜くように他の道を塞いだり石を脇に置いたりといった工夫をするなど。実際にワナを仕掛けたからといっても、なかなかかからないですし。

あるときワナを仕掛けて、それを地元の方に見てもらってアドバイスをいただいて、それを試してみると、翌日かかっていたことがあったんです!

「本当にかかった!」っていう感動がありつつも、次の瞬間には、「ちゃんと仕留めなきゃ」って言う思考に切り替わって、「でもこっからどうすんだ」って焦りましたよ!

状況に応じて仕留め方はいろいろあるんですが、自分の体重以上もあるような鹿が全力で暴れるので、自分もいつ怪我をするかわからない危機感の中で「止め刺し」をするのはこわい気持ちもあり、かわいそうだなって気持ちもあります。

狩猟では常に感謝とリスペクトを忘れずに

現場は壮絶なんですね…。そんな気持ちもあるなかで、狩猟を続けるモチベーションは何でしょうか?

大木さん
強いて言うなら、おいしく食べられることがモチベーションになっているところがあります。

ジビエは難しいのかと思っていましたが、不器用なりに一生懸命さばいて、いざお肉にして塩焼きとかで食べると「あー、こんなに柔らかく食べれるもんなんだな」ってうれしくなります。自分でとったからこそ、おいしさもひとしおです。

それに、お肉を自給自足できちゃうのってすごいなって思うんですよね。しかも今話題のジビエを!

女性の母性が働くのか、お肉のおかげで食料が増えて家庭が潤っちゃう点でうれしいなっていうのもあるのかもしれません(笑)

また、畑の獣害で地域の人が困っているのを知っているので、自分にできることならやりたいなという想いもあります。

狩猟は獣害という課題への対策であり、お肉が得られて自分にとっても有益なことという2つの側面に支えられて、日々成長させてもらってます。

最後、これから狩猟を始めようかなという人に伝えたいことはありますか?

大木さん
女でチビ(身長153㎝)の私でも挑戦しているので、興味とチャンスがあったらやってみましょう!ただし、仕留めることは命をいただくことで、怪我なく猟を終えられるのは狩猟仲間や山の神様が見守ってくれているからだと思います。

慣れるのは良いことなんですけど、知人の言葉でもある「感謝とリスペクトは忘れずに」を心に、いつまでも長く取り組めたらと思っています。

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